これは歴史に残らない
妄想の断片だ

- 過去のjackasson参加者の発表作 -

ジェネレーティブブロッコリー

 栄養価の高さはもとより、形状、色合い、ブロッコリーを構成する全ての要素に憑りつかれた、 ブロッコリー原理主義者による、機械学習を利用したブロッコリーアートである。
 あの大樹のような形状は、自然のアルゴリズムによってデザインされた美しさであり、 ブロッコリーの美しさを表現する瞬間、制作者は同時にブロッコリーを食した日々の記憶を、アルゴリズムの力によって壮麗化する。
 その美味しさ、美しさ、豊かさに心を浸している瞬間、人間世界は後退する。

女性追跡VRゲーム

 異性に対する興味関心は生物として正常な欲望であるが、 その正常な欲望はいかにして、異常な欲望に変容するのだろうか。
 この作品は、街の中で蟲の大群のような女性に追いかけられるVRゲームである。 奇声を呻きながら、追いかけてくる女性は、制作者と女性とのディスコミュニケーションを表現している。
 そして、ビルのように巨大な女性は、女性に屈服させられることで、 コミュニケーションを取り戻そうとする制作者の祈りである。

デスゲーム2023

 リアルハッカーによるデスゲームである。 この惨事により、現在まで3名ほど参加者が行方不明である。
 往々にして人間は自分が考える自己像と、実際の実像には乖離がある。 曖昧模糊な自己認識よりも、時には記録の蓄積によって、 思いもよらぬ自分の中の他人を見つけ出すことができる。
 そして、ゲーム上においては、より顕著にプレイヤーの人間性が露わにされる。
 あらゆるデータの収集による人間存在の解明は、 絶えず変化する制作者自身の内面を捕捉するためかもしれない。

エンジェル・パイ

 おっぱいに対する性的な興奮は、近代以前は相対的に低かった。 さらに言えば、ある程度の大きさが重要視されることもなかった。
 その意味からいえば、おっぱいに対しての執拗なまでのこだわりを見せる制作者の偏執は、 近代が産んだ病の一つかもしれない。
 しかし、そのおっぱいに羽を付けて、物質単体として捉えることは、 制作者が性的興奮とは別軸でおっぱいを捉えていることを示しているかもしれない。
 歴史的に見れば、おっぱいは豊かさ、母性の象徴である。
 その母性の象徴を、天使のような幻想的な存在として演出することは、 制作者が心から安心できる豊かな世界と、断絶している可能性を垣間見せる。